6月中旬、北欧デンマークの首都コペンハーゲン。ドイツ人の女性が中央駅の赤いポストに絵はがきを入れた。1日平均11万人が使う駅。だが、日中の3時間でポストを利用したのは、この女性だけだった。
このポストも含め、デンマークに1500あるポストはすべて、今年中に姿を消す。6月に撤去が始まった。
デンマークとスウェーデンの両政府が所有する「ポストノルド」が決めた。400年の歴史がある手紙の配達をやめ、民間企業に委ねる。
女性は「残念で、びっくりです。旅先から家族にはがきを送ることが好きなので」と言う。ただ、ポストノルドの手紙の配達量は、2000年の14億5千万通から24年は1億1千万通に。9割以上も減り、採算がとれなくなった。
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「デジタル化は、コミュニケーションの方法を変えた」。同社のアンマリエ・ガルトショル社長はそう説明する。「軽率な判断ではない。需要が物語っている」。ネットショッピングが普及するなか、需要が高まる小包の配達に注力するという。
「寂しさと、安心感と」 政府系企業の社員の思い
手紙の配達をやめるのは欧州ではデンマークが初めて。日常の風景だった赤いポストが消える現実を、人々はどう受け止めているのだろうか。
ポストノルド社員のカリーナ…